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有酸素運動と無酸素運動
運動と代謝機能が密接にかかわる疾病に、生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満など)と呼ばれるものがあります。
我が国では、高齢化・人口減に伴い、国民の健康だけでなく、経済力の維持という視点でも重要な社会的課題となりました。
生活習慣病の予防に対する運動の効果については、多数の根拠が報告されており、たとえ後期高齢者であっても、その効果は期待されます。
今回は、運動習慣の定着を目的に、有酸素運動と無酸素運動の効果の違いや運動の選び方についてご紹介します。
運動と代謝のメカニズム
運動の燃料源は、食物のなかに含まれている炭水化物(糖質)、脂肪、たんぱく質の3大栄養素であり、それらは酸化されてエネルギーになります。
エネルギーを得るために燃料を燃やす代謝経路はA)解糖系とB)有酸素系の2つに大別されます。
A)運動初期に働く解糖系
グリコーゲンやグルコースなどの糖質が、酸素を使わずに分解されることでエネルギーを生成します。この代謝産物が還元されると、乳酸になります。
この経路は、運動強度が高い場合にも働きます。
B)運動の持続で働く有酸素系
糖質に加え、脂肪酸が酸素を使って分解されることでエネルギーを生成します。
※運動強度が低い場合、有酸素系で十分にエネルギーの需要をまかなえますが、運動強度が高くなると、嫌気性解糖系もエネルギー代謝に関与するようになります。
無酸素性作業閾値
嫌気性代謝が運動中に働き始めると、主に解糖系の働きによって乳酸が生成されます。
運動強度の増加に従って乳酸の生成と除去とのバランスが崩れ、ある時点の運動強度以上になると血中の乳酸濃度が急激に増加します。
→この時点を無酸素性作業閾値(AT)と呼びます。
循環器疾患の運動療法(有酸素運動)などではこのATが基準とされます。
その理由として、
①AT以下の運動では長時間の持続運動が可能であること
②代謝内分泌系(代謝性アシドーシス、血中カテコールアミンなど)の変化が生じにくいこと
③高血圧、糖尿病、脂質異常症など、冠危険因子改善のためにも好ましい代謝強度であること
などが挙げられます。
長期的運動の代謝における効果
a)無酸素運動(レジスタンストレーニング)
筋のエネルギー貯蓄量が増加することで、筋力が向上し、日常的な動作においてのエネルギー効率が上昇します。また、基礎代謝や除脂肪体重の増加、インスリン感受性の改善なども認めます。
(具体的な運動例:短距離走、腕立て伏せ、懸垂など)
b)有酸素運動
心臓の1回拍出量が増加することで酸素需要が満たされるため、安静時や同一強度での運動時の心拍数が減少します。また、ミトコンドリアの増加や毛細血管の発達、筋繊維の酸素運搬体である筋ミオグロビン濃度の上昇なども認めます。
(具体的な運動例:ウォーキング、サイクリング、水泳など)
運動の注意点
運動を行う上で重要なことは、運動の①頻度、②強度、③持続時間、④種類を明確にし、個々の目的をはっきりさせておくことです。
▷無酸素運動(レジスタンストレーニング)
瞬間的な筋力、つまりパワーをつけることが目的であれば、無酸素運動を選択しましょう。
10~15回反復を1セットとし、1~3セットを繰り返すことが推奨されています。頻度は週2~3回を基本として、目的に応じて負荷量を調整していきます。以下に、「負荷と回数の関係」を載せておきます。
筋肉の連続的な収縮は、心負荷の増大や交感神経の緊張などから血圧上昇を助長するため、反復の間に必ず休止期を入れることで予防していきましょう。
▷有酸素運動
生活習慣病の予防や心肺機能の向上が目的であれば、有酸素運動を選択しましょう。
また、脂肪酸が燃料源であるため、中性脂肪の減少(ダイエット)も期待されます。
①全身運動であること
②5分以上継続する運動であること
③1回の運動で疲労して、継続不能にならないこと の条件を満たすことが重要です。
1日に30~60分、1週間に3~5回の頻度で行いましょう。運動の強度でよく用いられるのが、ボルグスケール(※)です。11(楽である)~13(ややきつい)くらいに感じる程度の運動強度を選択するのが良いでしょう。13(ややきつい)は、前述したATの運動強度に相当するとされています。
(※)現在は修正ボルグスケール:4(多少強い)~6
運動によって事故を起こしたり、疾病や障害が生じないように、安全性に十分に考慮した運動を選択していきましょう。
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